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三国間貿易についての考察

当社は設立以来、中国鋳物の専門商社として、中国の協力メーカーで生産した製品を日本国内に輸入し、日本のお客様に調達してきました。

中国メーカーや輸出代理店から出荷した旨連絡を受けると、お客様への納品までの一連の作業を、なかば機械的に日本の通関会社に依頼し、事務処理してきました。

ところが、突然お客様より「自社得意先のベトナム工場へ直送してもらえないか」とのお話を頂き、三国間貿易のお話のはじまりとなったわけです。

経験のない私は、その時「要はいつもの納品先ではなく、ベトナムに直送すればいいだけの話だろう」などとたかをくくっていたのです。

取りあえず通関会社に相談したら、それを「三国間貿易」と言うのだと教えてくれました。

輸出者の国と輸入者の国の間に第三国が仲介する貿易…

そもそも三国間貿易を行う事にどんなメリットがあるのか、調べてみました。

  • 第三国が仲介することにより、取引の信用不安を取り除く
  • 輸送コストを軽減する
  • 直送により納期が短縮できる
  • 税負担の軽減
  • 消費税がかからない

とあります。

コストの問題は大きいですので、まず通関会社に見積りをお願いしました。

見積書の項目には今まで見たことのない項目が英語でいくつも並んでおり、いつもの費用に比べて数万円ほどアップ、おまけに「実費」と記載された項目も数件並んでいます。あとどれくらいの費用が発生するのか、果たしてこれでコスト削減になるのか、と疑問に思いました。

初めて見る項目を一つ一つ調べていくと、結局日本に輸入する場合と大差ないことがわかりました。金額がアップしている部分は、万一の事を考えての「検査料」や立替手数料、事務手数料などと言う日本ではかからないチャージが追加項目としてあります。あと、聞きなれない「THC」「LLS」と言った言葉も見えます。調べても出てこない項目でしたが、金額的には結構な比率を占めます。

また税金に関しても、当該製品は日本では関税が無税なのに対して、ベトナムでは5%、これも

大きな負担です。

ベトナムで消費税に当たるものを「付加価値税」と言うそうですが、それは輸入者が納めるものなので、納税の義務は発生しません。

「事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡するいわゆる三国間貿易の場合は、国外に所在する資産の譲渡であり国外取引に該当しますので、その経理処理のいかんに関わらず課税の対象とはなりません。」と国税庁のホームページにもあります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6210.htm

税務署に問い合わせても、弊社と得意先の間でやりとりの際は、消費税抜きの伝票を発行すれば良いと言われました。

その点はメリットがあっても、問題は、消費税の額から商品の原価がわかってしまう事です。

消費税を納めるのは輸入者、エンドユーザーに原価がわかってしまう事を避けられません。

通関会社に立替え払いをしてもらっても、最終的に請求する時点でわかってしまいます。輸出用のインボイスと輸入用のインボイスを2件作成することで原価を開示することが避けられても、今度は輸入用のインボイスで売値が開示されてしまいます。弊社の得意先も売値が弊社にわかってしまう事は絶対避けたい、とおっしゃいます。

「三国間貿易」という形態がある以上、こんな例はさがせば山ほどあるはずです。それなら、経験のある企業の皆さんはこの問題をどうやって解決しているのでしょう。

私自身、図にして頭の中をもう一度整理したところ、第三国に当たる会社が2社介入しているから事がややこしくなっていることに気が付きました。冷静になればすぐ気付く事が混乱すると全く見えていませんでした。

そんな時に、通関会社から連絡がありました。

メーカーからエンドユーザーまで、4社が絡んでくる形態では物理的に作業は無理、との事でした。

どこかの段階で原価、売価が漏れる事を避けられないので、通関会社としてもリスクが高すぎるとの事です。従って、「弊社抜きで取引をすれば事はうまく運ぶのでは」と提案を頂きました。

これにて、三国間貿易のお話はあっけなく弊社の手から離れる事となりましたが、ムズカシイなぁ、と感じたのは私の頭が悪すぎでしょうか?

しかし、取扱額が大きければ、自由貿易協定を利用し、東南アジア諸国を拠点として、税制面で優遇されるよう現地法人でも設立し商売をする事が賢明なようです。

そんなことを真剣に検討すべき時が来たのかもしれません。